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『同時代』について


編集人 清水茂

  1948年に矢内原伊作、宇佐見英治らを中心に第1次『同時代』が発足しましたが、7号をもって終刊となり、1955年12月に改変され、新たに「黒の会」編集としての第2次が刊行されました。当時の編集同人は上記の2氏の外に、伊藤海彦、宗左近、曽根元吉、安川定男、吉村博次、人見鐵三郎の以上8名でした。その後、すぐに山崎栄治、村上光彦らが加わりました。実質的にはこの第2次からがこんにちまでつづく本誌の歴史ともいえます。ジャコメッティの没する前年にあたる1965年には第19号で「ジャコメッティ特集」を組んだりしています。残念ながら、この第2次『同時代』は1993年1月に第59号を出して終刊となりましたが、それまで本誌を支えてくださった方がたの熱いご意向もあり、同人だった者たちの強い願いもあって、1996年に現在の第3次が発足することになりました。
  戦後の精神的な混乱期からこんにちにいたるまで『同時代』の執筆者たちはつねに洋の東西を問わず、諸文化、諸芸術に差異を超えての根源的共通性を探りながら、生きた現実世界の状況から目を逸らすことなく、しかし、けっして時流に阿ることなく、言語芸術における人間的真実の新たな表現の可能性を一貫して探求しつづけてきました。同人に多少の異同はあっても、自らこの姿勢は今後も保ちつづけられることでしょう。
  なお、現在も『同時代』誌刊行の母体となり、また、読者との開かれた交流の場を供してもいる「黒の会」の名称の由来は、戦後ほどなくの時期に来日した「デボア」という黒人合唱団の演奏会を日比谷公会堂で聴いた同人のメンバーが、その衝撃を自らの活動の基盤にとどめておきたいとした意図に発するものです。
  基本的なリズムとしては、年2回の刊行ですが、こんにちの厳しい状況のなかで、なお持続のエネルギーを燃やしつづけてゆく所存です。








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